Building alternative practices for RRI in Japan and the UK

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各国の政府がその不確実性を認識しながらも科学・技術・医療に対して経済成長への貢献を求める現代社会においては、人文・社会科学分野に対してもその実現のために社会的な関与や受容を促がすという役割を期待する傾向が強まっている。しかし、そのような期待の高まりは、科学や技術、そして社会の発展に対して人文・社会科学分野が為すことのできる貢献のあり方について極めて限定的に理解している様に思われる。

今回私たちは英国ESRCより研究助成を得て、萌芽的な科学・技術分野における『責任ある研究とイノベーション』について、より包括的かつ批判的な議論の展開を目指した日・英国際連携プロジェクトを開始した。ここで目指される議論では、国家間の差異を適切に反映することに加えて、改めて人文・社会科学分野の関与のあり方について再帰的な視点を持つことが鍵となる。本プロジェクトは、日・英両国で開催される二回のワークショップを中心としてその活動を行っていく。

 
 

Workshop 1 – Exploring Responsible Innovation

第1回ワークショップ (英国エジンバラ) 2019年3月

第1回目のワークショップでは、それぞれ英国と日本における『責任ある研究とイノベーション』に関わる政策的な議論と実践の展開について検討を行った。プロジェクトに参加する各メンバーが関連する事例について紹介し、それらの事例の中で科学者、社会科学者、そして政策担当者が異なる形で研究やイノベーションに求められる「責任」を想定していることが確認された。

また、既存の実践や政策が特定の場所に留まらず、国際的な社会構造の中に組み込まれていることについても議論を行なった。例えば、『責任ある研究とイノベーション』の議論の傾向として、その主体として想定される科学者の言動ばかりが強調される一方で、その活動を取り巻く経済環境などについてはしばしば見過ごされがちである。加えて、『責任ある研究とイノベーション』では主に共同体としての責任が強調されるのに対し、医療などの分野では今日に至るまで責任は主に個人に帰属することが想定されている。さらに、近年の『責任ある研究とイノベーション』の議論が複雑で大規模な技術開発をその対象として展開されており、小規模で技術的な要素の少ない組織や行動に関するイノベーションなどにはそのような議論が見受けられないという状況も指摘された。

一般的に日本語で「責任」と訳される「responsibility」という考え方は英語では同時に「応答可能性」という意味合いも込められており、実際にそれが何を意味するのかは実践を通じて明らかにされるものとして理解できる。そして、今回のワークショップの議論からは、そのような実践がそれを取り巻く環境によって規定されているということが見えてきた。『責任ある研究とイノベーション』という標語が登場して以来、それを実現するための枠組みや手引き、参考事例の蓄積などが求められてきた。具体的な手順や手引きの明確化といった作業が重要である一方で、それらを求める背景には目指されている『責任ある研究とイノベーション』がどのような環境においても画一的な手法で実現できるという思い込みがあるのではないかということが危惧される。そのような思い込みによって、科学と社会の相互的な関係性やその接点に位置づけられるイノベーションのあるべき方向性に関する重要な議論がなされないままになってしまうのではないだろうか。

異なる技術、異なる手法、異なる関与のあり方を検討した結果、本プロジェクトでは『責任ある研究とイノベーション』を現在想定されているよりも多様な社会的関係性を可能にする「空間」として位置付けることとした。このように空間的な側面に注目することで、異なる文化や規範、そして行動様式を有する多様な主体の存在を前提とする生態系の中に研究やイノベーションを位置付け、本プロジェクトが目指す「代替となり得る別の形態の」実践もそのような環境の違いに依存することが強調される。また同時に、この「空間」という比喩表現は、その中で起こるイノベーションのあり方を制約する構造の存在を想定させ、様々な可能性があるにも関わらずなぜ「代替となり得る別の形態の」実践を実現することが容易ではないのかについても検討を促すものである。

生物学、工学、医学、そして情報科学に跨って事例研究を行うことで、本プロジェクトでは以下の4つの焦点に着目をしながら『責任ある研究とイノベーション』の議論の更なる展開を目指す。

  • Discourses and metaphors. (言説と比喩)

どのような言説や比喩表現が『責任ある研究とイノベーション』の中でも特に「責任ある」ということの理解を可能にしているだろうか?

  • Temporalities & Histories. (時制と歴史)

各環境において『責任ある研究とイノベーション』のあり方を規定する歴史的な瞬間とはどのようなものだったのか?また、そのような瞬間にはどのような社会的あるいは政治的なダイナミクスが存在していたのか?

  • Responsibilities.(責任の詳細)

    研究やイノベーションの実践において「責任」という言葉はどのように理解されているだろうか?また、それはどのような主体によって実現され、各主体に分配されているのだろうか?そして、どのような社会的・政治的背景がそれを可能にしているのか?

  • Alternatives & Interventions. (代替と介入)

現時点で主流となっている『責任ある研究とイノベーション』の理解を切り崩すためには、どのような可能性が存在しているだろうか?

Collaborations
Edinburgh RRI Workshop Lunch
Ryuma ELSI Policy

Collaborators